地球環境を維持するためCO2排出量を抑えること
不動産業界でも、政府が掲げた2030年までに温室効果ガスを46%削減(2013年比)、2050年までにカーボンニュートラル達成目標を意識して行動する企業が増えています。
この兆候は世界的潮流である地球環境を維持するための行動、または政府の指針に沿った行動という意味合いも強くありますが、金融や市場が利益追求型からSDGsやESGを意識した、言わば環境配慮型に振れてきたところにも理由があります。
細かい解説は別の記事を参照していただくとして、おおまかに解説すると金融業界も市場も環境配慮を怠る企業は、消費者の選択肢から漏れていくことになると考えていることと、環境に配慮しない企業の金融支援は金融機関側の沽券にも関わるということです。
ですから不動産開発などを行う企業が融資を受けるなど、金融機関と関係構築するときに、CO2排出量の削減に向けた取り組みを行っていないと良い条件の融資が難しかったり、最悪のケースでは融資が下りないことや、借入済融資の撤退(ダイベストメント)などという事態を招く恐れが多くあります。
CO2排出量の多くは事業と関わっています。ですから企業のCO2削減が求めれているわけですが、企業がCO2削減に向け努力をすることは、世界規模で問題になっている環境対策への行動となり、ブランディング向上やマーケットに対するアピールにもなります。またCO2削減を行うことで地球全体に向けた社会貢献を行うことにも繋がります。2030年まで残り8年、可能な限り早く取り組むことが求められています。
温暖化が進むにつれて激甚化する災害に備えること
2030年を待たずして、日本を取り巻く自然環境は変化しつつあります。台風の大型化、突然の厳冬、頻発する線状降水帯。もはやそれらの気象情報を聞かない年はありません。いずれも地球温暖化やそれにともなう気象状況の変化と言われています。
そのようなときに多く発生するのが停電です。台風で送電線が破損し、広域で停電したり、マンションの地下が水没して高層マンションのエレベーターが動かないなど、東京近郊でもここ数年で多様な事象が発生しました。
このような場合、非常用電源の装備があるとマンションの住民に安心感を与えられると同時に、必要最低限の電力供給が可能になります。非常時に対応できる力を「レジリエンス」といいますが、不動産のレジリエンス強化は、近年の気象状況を鑑みると、2030年よりも前に対応を始めておく必要がありそうです。
化石燃料の高騰に備えること
従来より地政学的な問題とOPEC(石油輸出国機構)の減産などにより、石油価格は上昇傾向にあります。一方、今、日本の発電原料の主流であるLNG(液化天然ガス)も、新型コロナウイルスの影響を受けた物流の渋滞や、中国の輸入増などを受けて価格が高騰・資源不足に陥っています。
温室効果ガスを排出する上に価格まで高騰している、日本の主力電源である火力発電所。火力発電所が主力である限り、燃料費高騰は電気代高騰に直結してきます。この2つの問題を同時に解決するのは原子力か再生可能エネルギーによる発電ですが、原子力発電は2011年以降稼働させるに不十分な安全性のままです。
つまりどのような方法であれ、再生可能エネルギーの導入を進めておけば、少なからず化石燃料費用高騰の影響を和らげる効果を得られます。それと同時に、年々価格上昇をしている、全国民負担の「再生可能エネルギー賦課金」の支払いを避ける方法である自己託送なども検討し、居住者のメリットと電力効率化を同時に図ることを検討しましょう。
CO2排出量・災害対策・燃料費高騰に紐付けられるのが電力の供給
2030年までに不動産業界で必要な行動は、「CO2排出量の削減」「居住エリアの災害対策(レジリエンス)」「燃料費高騰対策」を挙げましたが、いずれの問題にも紐付いているのは「電力」です。
不動産における電力は保有企業やオーナーだけでなく、居住者にも大きく影響するため入居率や賃料などに波及し、対策をとることで大きなリターンやメリットを生む可能性があります。
下表は発電種別CO2の排出量を示したグラフです。このように現行主力となっている、化石燃料電源(石炭火力、石油火力、LNG火力発電設備)は多くのCO2を排出しています。無論、これらをすぐにゼロにするのは不可能です。しかし、徐々に他のCO2排出量が少ない電源にスライドしていくことは可能です。

ひとつの解決策として、マンションの屋上などに太陽光発電システムを無料で設置するPPAモデルによって、再生可能エネルギー導入の第一歩を踏み出すことは、2030年までに対策するべきことのスタートになると考えます。その後、省エネやコーポレートPPAなど別の施策を並行して走らせ、それぞれの問題の解決に取り組むのが良策と言えそうです。