PPAモデルとはどんなものか
本題に入る前に、PPAモデルの大別を理解する必要があります。PPAとは「Power Purchase Agreement」の頭文字で、和訳すると電力購入契約となります。ただし通常の電気を使用する際に締結する、一般的な「電力需給契約」とは異なります。
企業や自治体などの法人が、PPA事業者との間で長期に渡り(再生可能エネルギーの)電力を購入する契約を指します。そのことから単にPPAと呼ぶよりも、コーポレートPPAと呼ばれることが多いです。
コーポレートPPAには、大きく分けて2通りあります。「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の2通りです。「サイト」とは土地(所有地)のことで、「オンサイト」は「自社の敷地内」、オフサイトは「自社の敷地外(別の場所)」を指します。「ソラシェアダイレクト」はマンションやアパートの屋根に設置するので、「オンサイトPPA」に該当します。
これら2つのコーポレートPPAの方式は、実際に電気の需給と環境価値の取引を直接行うことから、「フィジカルPPA」と呼ばれることがあります。反義語としては「バーチャルPPA」というものがあります。電力卸市場(JPEX)を通じて、小売電気事業者経由で再生可能エネルギーを受けるものを指します。
大分類 | 中分類 | 小分類 |
---|---|---|
コーポレートPPA | フィジカルPPA | オンサイトPPA |
オフサイトPPA | ||
バーチャルPPA | (非化石証書など) |
官公庁が公布元の補助金
温室効果ガスに関わる問題は「環境省」、再生可能柄エネルギーに関わる問題は「経済産業省」などいろいろな要件で担当が振り分けられる官公庁ですが、今回ご紹介するのは環境省管轄の補助金制度です。
環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」は、令和3年度分の公募受付中です。
第5次 2021年8月9日(月)~同年8月31日(火)正午まで【必着】
第6次 2021年9月6日(月)~同年9月30日(木)正午まで【必着】
※予算額に達した場合はそれ以降の公募を実施されないことがある
本補助金の目的は、脱炭素化の推進や防災に資する太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせたシステムのオンサイトPPAモデル等による設備導入等支援です。設備の価格低減を促進し、ストレージパリティ(*1) の達成と災害時のレジリエンス向上を目指すものとされています。
蓄電池を導入しないよりも、蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態のこと。経済産業省が公開した「ソーラーシンギュラリティ(*2) の影響度等に関する調査」報告書によると、蓄電池価格が6万円/kWhとなることでストレージパリティは達成可能としている。
米国のTam Huntが提唱した概念で、太陽光発電によって生み出されたエネルギーが最も安価で標準的なエネルギーになる時点(特異点)を指す。世界中でエネルギーシステムの変革が進み、エネルギー貯蔵や電気自動車、グリーンテックの普及によってソーラーシンギュラリティが実現すると唱えている。
本補助金の対象者は、民間企業、青色申告を行っている個人事業主、独法・一社・一財・社団・公財の各法人、地方公共団体、個人を含めた環境大臣の承認を経て機構が認める者としています。つまり広く門戸が開かれている状態です。
補助金額に関しては、用いる設備によってことなりますので、下表を参照してください。
基準額 | |||
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太陽光発電設備 | 定置用蓄電池 | 車載型蓄電池 | 充放電設備 |
定額(5万円/kW)+設置工事費相当額10万円 | 産業用:定額(6万円/kW)および設置工事費相当額(10万円)を合算した額と間接補助対象経費に1/3を乗じて得た額と比較して少ないほう | 定額(蓄電容量(kWh)×1/2×2万円 | 1/2+設置工事費定額(上限額:1基あたり産業・業務用95万円、家庭用40万円 |
<公募の詳細・問い合わせ先>
一般財団法人環境イノベーション情報機構
自治体が公布元になっている助成金
ここでは国内最大の自治体・東京都の助成金からご紹介します。東京都の「地産地消型再エネ増強プロジェクト」は、その名の通り都内に発電設備を設置し、都内でエネルギー消費をするものに対して行われる助成金です。
この助成金については一般電気事業者(東京都であれば東京電力パワーグリット)の送電網を用いて送電することが可能なので、「オフサイトPPA」でも用いることが可能です。
「地産地消型再エネ増強プロジェクト」は、環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」と違い、個人は助成対象になりません。各種法人格を含む民間企業が対象となっています。
なお、2021年度分は予算額到達のため、次回受付は来年度分の申請になります。公募は2023年度まで毎年行われる予定です。助成上限額と該当要件は以下の通りです。なお要件に関しては各種再生可能エネルギーが対象になっていますが、ここでは抜粋させていただきます。
助成対象者 | 助成率 | 助成上限額 |
---|---|---|
中小企業等 | 助成対象経費の3分の2以内。(国等の助成金を併給する場合でも、合計3分の2以内) | 1億円 |
その他 | 助成対象経費の2分の1以内。(国等の助成金を併給する場合でも、合計2分の1以内) | 7,500万円 |
設備の種類 | エネルギー区分 | 要件 |
---|---|---|
再生可能エネルギー発電等設備 | 太陽光発電 | 出力5kW以上 |
風力発電 | 単機出力1kW以上 | |
蓄電池 | 再エネ発電設備と同時導入 | 再エネ発電設備と同時導入 |
「ソラシェアダイレクト」に活用できるのか
オンサイトPPAの場合は環境省の補助金に申請することは可能です。
公式:定額(5万円/kW)+設置工事費相当額10万円
例:太陽光電池モジュールの公称最大出力の合計値120kW、パワーコンディショナ―の定格出力100kWを導入する場合、100kW×5万円/kW+10万円=510万円の補助金を得ることが可能
太陽光発電以外に活用する場合、キーワードになるのが「蓄電池」です。例えば営業車を蓄電池搭載の社用車(車載型蓄電池)に転換したり、建設中のマンションにV2H充放電設備(EV車に充放電できる電気スタンド)を設置することで、利用するこもが可能です。これらの設備は、非常時電源としても活用できるので、レジリエンス力の向上に繋がります。
SDGsや国の脱炭素目標が立てられている現代では、企業価値向上は環境問題にどれだけ取り組んでいるか、物件価値向上は居住空間の快適性に加えて、環境配慮や非常時対策が施されているかに比例してくると考えられます。
2030年、2050年に向けてよりよい企業運営、物件提供を考える上で不可欠になることは間違いないので、ソラシェアダイレクトの『無償設置』のほかにも補助金・助成金を活用して、時代にあった企業価値・物件価値を提供していきましょう。