持続可能性とはなにを「持続」させるのか
「サステナビリティ」の本意は、とある機構や工程を持続させることを指しますが、この数年来使われている「サステナビリティ」は、環境学または生物学上に関する持続可能性を指すことが多くなりました。
これは、2015年9月に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)に紐づくもので、その前進である2000年9月に国連で採択されたMDGs(Millenium Development Goals/ミレニアム開発目標)にはあまりみられないものでした。
では、SDGsの17のゴールとMDGsの8つのゴールを比較してみましょう
SDGs | MDGs | |
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貧困 |
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健康 |
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教育 |
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差別 |
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環境問題 |
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ビジネス |
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生態系 |
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MDGsで達成できなかったものを細分化したにしろ、これだけ目標設定に差があります。上述したように環境学や生物学に反映されるべきサステナビリティの目標が増えていることや、環境の中でもエネルギーに着目した目標があること、ビジネス面での目標が重視されていることが特徴です。これは、地球温暖化における生態系の崩壊抑止や、地球温暖化に拍車をかける産業の拡大抑止などを見据えて設定されており、それらを実現するために政府だけではなく、民間との協力(パートナーシップ)を促進させて利益を生む活動にし、一時的ではなく持続的に取り組み続けるモチベーションを保つための変更です。
日本におけるサステナビリティの代表例
日本においてサスティナビリティといえば、たとえば誰もが身近に感じられるのがプラスチック製品の再生利用です。SDGsでいえば12番目の「つくる責任つかう責任」に該当します。そもそもプラスチックは原油由来の製品なので、原材料のサステナビリティが乏しいことが挙げられます。
そのために分別回収されたプラスチックは、「マテリアルリサイクル(被服素材や建材、自動車部品など)」「ケミカルリサイクル(ボトルへの再生、水素ガス、コークスなど)」「サーマルリサイクル(固形燃料化、ゴミ焼却熱の利用など)」という形でリサイクルされています。
出来うる限り再生し廃棄物を減らすことで、石油資源依存の軽減と二酸化炭素排出も減らす目的があります。国においても2021年6月に「プラスチック資源循環促進法」国会において可決成立させました。
日本におけるサステナビリティの遷移
日本はもともとはサスティナブルな暮らしをしていました。江戸時代のころなどは人糞まで再利用する超循環社会だったということなどは有名な話です。そういった暮らしが崩れ始めたのは1950年代。高度経済成長期となり、大量生産大量消費が始まった頃です。
その大量生産大量消費の流れは今を持って問題とされ続けています。そういった傾向については1950年代後半には公害や環境問題などですぐに問題視されるようになり、「心の豊かさ」を求める傾向が生まれましたが、太陽生産大量消費の問題は今もなお問題とされ続けています。
「リサイクル」という言葉が使われ始めたのは1970年代中頃で、1990年代には環境負荷が少ない商品を選ぼうというグリーンコンシューマー運動が日本でも広まり、2000年には各種リサイクル法なども策定されています。
そういった流れで2015年にSDGsという目標が策定され、その認知度が約5割にまで増してきている現代ではその取組も含めサスティナブルにしていこうとなっています。
サステナビリティはリニューアブルから
エネルギー分野が関わる目標と言えば、SDGsの7番目「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と13番目の「気候変動に具体的な対策を」が該当します。20世紀まで王道だった石油・石炭を主とする化石燃料依存型の発電技術は、化石燃料の枯渇が危ぶまれサステナブルではなく、温室効果ガスである二酸化炭素の排出も多いことから13番目の「気候変動に具体的な対策を」においても改善すべき点だと考えられます。そこで注目されているのはサステナブルな再生可能エネルギーというわけです。
再生可能(Renewable)と持続可能(Sustainable)は同意義として捉えられえています。再生可能エネルギーの最たるは「太陽光発電」ですが、宇宙でとんでもないことがおきない限りは再生可能で持続しつづけます。「風力発電」や「水力発電」も同様です。しかも二酸化炭素の排出も直接排出量 (*1) はゼロで、地球温暖化抑止にも貢献していることになります。
今後求められるサステナビリティ像
今後2030年・2050年に向けて大きく注目されているのは「脱炭素」です。これもサステナビリティのひとつで、上述したように『地球環境に対して配慮』に値することです。二酸化炭素を代表とする温室効果ガスは地球温暖化の大きな問題とされています。そこを削減していかなければ、最終的には事業継続が困難になる可能性も秘めています。
そのひとつがESG投資です。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(管理・統治)の頭文字をとった投資指標で、企業がこの3項目に対してどのような行動を取っているかに着目した投資手法です。大手企業ではこの指標をCSRとして開示している企業もあり、国内外の大口投資家・機関投資家・大手ファンドなどが注目しています。
日本国内で一番有名になった機関投資家は「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」です。年金積立金運用の一部に株式を利用しています。その際の投資先選定にESGの観点を使用しています。つまりサスティナビリティの意識をしていない企業には、今後投資してくれる投資家が減ってくるということです。投資を呼び込めない企業は、それこそ事業の持続可能性の低下が考えられ、ESGを意識しない個人投資家からの投資でさえも見込めずというスパイラルに陥ることでしょう。
実際に海外ではこの現象が起きています。オランダのGPIFともいえる「ABP」は、2050年までに投資ポートフォリオを「脱炭素」にすると発表しました。これは石炭採掘や石油関連企業から投資撤退することを意味しています。このような投資撤退は「ダイベストメント(インベストメントの対義語)」と呼ばれています。実際、すでに日本企業でも大手電力会社などが、ノルウェーなどの機関投資家からダイベストメントをされています。
中小企業にも求められるサスティナビリティ
上場していない中小企業は「株式公開していないから安心」というわけには行きません。大手企業のサプライチェーンであれば、取引先の大手企業が「脱炭素」を目指す場合、サプライヤーもそれを求められるケースがあるからです。
一番有名どころでは「Apple」です。全世界にサプライヤーを抱えるAppleですが、サプライヤーにも再生可能エネルギー100%導入を要請しています。というのもApple本体が再生可能エネルギー100%で企業活動を目指して「RE100」に加入し、2019年時点で直営店・オフィス・データセンターなどの施設すべてで100%を達成しています。ですが、サプライヤーがそうでないと完璧なる100%にならないからです。
話をSDGsに振り返りますが、SDGsのコンセプトは「誰ひとり取り残さない」です。これは恩恵を受ける側だけだと取られがちですが、努力する側にも言えることです。どんなに小さな努力の積み重ねでも、お互いを支えあって進めていかなければ「サステナブル」にならないということです。
結論:企業におけるサステナビリティとは
ここまでいくつかのフィールドを例にあげて説明してきましたが、結局のところサステナビリティとは以下の3つにまとめられます。
- 有限な資源の使用を控え、かつ温室効果ガスを削減する企業活動
- 大企業だけでなくあらゆる企業に求められている考え方
- エンドユーザーだけでなく、企業間の関係性においても今後重要視される考え方
各分野で目標値があるものの、持続させなければならない最終ターゲットは「地球環境」です。つまり、『資源・材料などが再生可能であり、かつ地球環境に対しての配慮』を持続することが、今求められているということです。早いうちから対応すれば他企業に差をつけられますが、対応しなければ競合や協力会社からどんどんおいていかれ、見捨てられてしまします。必要性やその背景を理解し、早いうちから価値観をアップデートしてサスティナビリティな社会に適応できる企業態勢を整えていきましょう。